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霊視占い

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どこに向かっているのか分からなかったので、ちょうどよかったのかもしれない。

高校時代の親友に連れられて、中華街の霊視占いに行った。

 

「中華街」と「霊視」という単語が一文に並ぶとなぜこんなにも胡散臭く聞こえるのかは不明だが、たどり着いた先、ビルの一角にある小さなブースは、やはりどこか怪しい雰囲気が漂っていた。60代か70代あたりの男性が一人座っていて、正面に置かれているのは水晶。額縁メガネの奥からこちらをじっと見据えている。

 

よく当たる霊視だと話題な事もあり、圧倒的な洞察力が伺える鋭い視線からは、すでに全てを見透かされているような雰囲気が伝わってくる。緊張する。背筋を伸ばし、親友が恐る恐る、霊視にきたと告げると、

 

霊視の男性は黙ったままこちらをみて、言ったのである。

 

「えぇ?なんてぇ?」

漫画のワンシーンかのように両耳に手を添えながら聞き返す、見事に間抜けな返答である。

 

しばらく大きな声でやりとりをし、最初に私が霊視占いをしてもらうことに。どうやら料金は時間制らしい。

 

どんなことをみてもらえるのかというと、

「今、自分が働いている仕事場は向いているのかどうか、とかね。」と占い師。

 

「あ、社会人じゃなくて私、大学生です」と私が言うと、

男性は一瞬目を見開いて、「えぇ!?学生なの!?」と占い師とは思えない素の驚きを見せた後、平常心を装って、「・・学生の場合は大学院に進むべきかどうか、とかね」と説明を変更してみせた。どんな状況にも平然と対応する、これがプロの腕前である。

 

卓上には様々な難しい記号の書かれた表や、水晶などが置かれている。

 

まずは生年月日と生まれた場所・時間を聞かれた。

おっちゃんは脇にある、すでにサポート対象から外されているような古いバージョンのウィンドウズのパソコンからアプリを起動し、生年月日の情報を記入して、OKボタンをポチッとな。水晶は使わない。

 

ははーんと言いながら、画面に映し出された情報を解読している。

 

「昨年・・」占い師が口を開く。どうやら占いが始まるようだ。

はい、なんでしょう。昨年。

 

「昨年、友人にあったんじゃないかな。球を避けるようなことをしている友人に。」

球を避けるような?一体どういう意味なんだろうか。

 

「野球とか、卓球か、をやっている人。」

 

野球で球を避けたら大変である。三振でアウトである。卓球でも球を避けていたら試合にならない。そんな疑問を飲み込みながら一応考えるが、全く該当する人が思い当たらない。首をかしげる私を見て、おっちゃんは頷きながら、そうかそうか、と軽く流す。

 

「じゃあ、一昨年・・・」再び、思慮深い表情で口を開く。

「一昨年は、芸術家にあったんじゃないかな」

 

これもまた思い当たる節が全くないので、首を振ると、そうかそうか、とこれまた特に驚く様子もなく軽く流されてしまった。うーん、と言いながら彼は唐突に言った。耳を見せてくれないかな。と。

疑問に思いながら両耳を見せると、占い師は首を傾げながら、「耳の形をみると・・記憶力は良いようだね」とボソッと呟いた。どうやら、「球を避ける人」にも、「芸術家」にもピンとこないのは、私の記憶力が原因だと疑われていたようだ。なんとも心外である。

 

その後の占いも圧巻であった。

 

おっと、と言いながらアプリを一度閉じてしまうハプニングに見舞われたため、もう一度生年月日の入力から始める事になったと思えば、今度は手元に置かれてあった、なにやら難しい漢字の書かれた小さなサイコロを三つ同時に振り、「これじゃないなぁ」と私の顔を見比べながら、首をかしげる動作を繰り返していた。

「見た目は、保育園の先生とかなんだけどなぁ」とブツブツと呟きながら求めている結果を出すべく、サイコロをまた振った。私はいろんな意味でハラハラする。料金は時間制のはずだが、彼はサイコロを振り続ける。この儀式はいつまで続くのだろうか。

 

キリがよかったのか、飽きたのか、4度ほどサイコロを振り直した後、脇に置いて、気を取り直したようにパソコンの結果を印刷し始めた。サイコロの意味はなんだったのだろうか。

 

印刷した紙を渡され、詳しく占い結果を解説してくれるようだ。

 

「医薬関係の仕事に就くねぇ。薬とか興味あるんじゃない?」

と聞かれ、私は驚き、本日何度目かだが、首を横に振る。全く、興味がない。

 

「そっか・・」と、占い師は何事もなかったかのようにさらりと流すが、気まずい空気が流れる。

 

ここまで当たらないと可哀想に思えてきたため、軌道修正すべく、「行動経済学などを学んでいて、でも、興味があるのは書いたりすることなんですが」と伝えると、占い師はやはり動じることなく、「いやー、医薬関係だね」と断定した。

 

「外科医に何かを教えるような仕事だね。そして、教え子が本を書くね」と占い師。

ちなみに私自身が本を書くことはないんですか、とちらりと聞いてみると。

 

「いや、あなたにとって書くことは、あくまでも趣味だね。趣味、趣味。」

と今日一番の力強さで説いてくれた。

 

再来年にはお金をがっぽり稼ぐ、海外で活躍する、など、なんとなく当たりそうな予想をされた後、締めにはこんなお言葉をいただいた。

「火に関する何かで・・・お金を稼ぐね。」

 

思うに、おっちゃんはもうやけくそである。

 

最後に「いやー優秀なのにもったいない、もったいない」と残念がられる後味の悪いコメントで、占いは終了。どんぐらいかかったっけ、10分かな。と料金もテキトーである。

やはり最後まで水晶は使わなかった。

 

渡された紙にも素っ頓狂なことが書かれていた。

『三枚のお札申込書』や『公認鑑定講座』の紙。めくると、最後のページに占いの結果があった。

 

最初の段落は通常の占いであるような性格や態度が書かれていたのだが、その後からは急に「丸顔にうりざね形が加味した顔で色白で・(略)・・愛くるしい目には穏やかさがあり細いまゆとまぶたが美しい。」そして締めくくりには、「多くは中肉中背である。」と、なんと容姿まで霊視されてしまっている。

 

しかし、最後の段落が印象的だった。

 

「選ぶ仕事によって人生が大きく変わるのですから慎重に職業の選択をいたしましょう。

つまり仕事の奴隷となるか進んで仕事を道具にするか覚悟を決めましょう。」

 

内容は前後の文脈から飛躍しているし、別の人間が書いたのではないかというほど文調が変わっているが、なぜだか何度も読み返してしまった。

 

仕事の奴隷となるか、仕事を道具にするか。

 

ふむ。

最終的にどこに進むか迷宮入りだが、占い師はこれを伝えたかったのかもしれない。

 

おっちゃんありがとう。

ちなみに彼は、弟子も募集中である。

 

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